固有値計算機

この固有値計算機では、2×2行列および3×3行列の固有値と固有ベクトルを計算できます。線形代数、大学数学、工学、物理学の学習に最適な数学ツールです。

はじめに - 固有値・固有ベクトルとは?

固有値(こゆうち、英: eigenvalue)と固有ベクトル(eigenvector)は、線形代数における最も重要な概念の一つです。固有値 計算は、数学、物理学、工学、データサイエンスなど幅広い分野で応用されています。

n次正方行列 A に対して、ゼロでないベクトル v が Av = λv を満たすとき、v を固有ベクトル、スカラー λ を固有値と呼びます。これは「行列 A によってベクトル v を変換しても、方向は変わらず大きさだけが λ 倍になる」ことを意味します。

固有値の概念は、1846年にフランスの数学者オーギュスタン・ルイ・コーシーによって導入されました。その後、19世紀から20世紀にかけて、多くの数学者(カール・ヤコビ、シャルル・エルミート、ダフィット・ヒルベルトなど)によって理論が発展しました。

日本では、大学1〜2年生の線形代数で固有値・固有ベクトルを学習します。理工系の学生にとって必須の知識であり、量子力学、振動解析、主成分分析(PCA)、Googleのページランクアルゴリズムなど、多くの実用的な応用があります。

2×2行列の固有値と固有ベクトルを計算します

例: 単位行列の場合 a=1, b=0, c=0, d=1

計算結果

計算結果がここに表示されます

固有値・固有ベクトルについて

固有値(こゆうち、eigenvalue)と固有ベクトル(eigenvector)は、線形代数における重要な概念です。

定義

行列 A に対して、Av = λv を満たすベクトル v(≠ 0)を固有ベクトル、 スカラー λ を固有値と呼びます。

固有方程式

固有値は det(A - λI) = 0 を解いて求めます。これを固有方程式(特性方程式)と呼びます。

重要な性質

  • 固有値の和 = トレース(対角成分の和)
  • 固有値の積 = 行列式
  • n次正方行列は n個の固有値を持つ(重複を含む)

固有値の計算方法

固有方程式

固有値 λ は、固有方程式(特性方程式)det(A - λI) = 0 を解いて求めます。

ここで、det は行列式、I は単位行列です。

2×2行列の場合

行列 A = [[a, b], [c, d]] の固有方程式は:

det(A - λI) = det([[a-λ, b], [c, d-λ]]) = 0

(a-λ)(d-λ) - bc = 0

λ² - (a+d)λ + (ad-bc) = 0

これは λ についての2次方程式なので、解の公式で解けます:

λ = [(a+d) ± √((a+d)² - 4(ad-bc))] / 2

固有ベクトルの求め方

固有値 λ が求まったら、(A - λI)v = 0 を解いて固有ベクトル v を求めます。

例:λ = 3 のとき、[[a-3, b], [c, d-3]] [[v₁], [v₂]] = [[0], [0]] を解きます。

重要な性質

  • トレース:固有値の和 = tr(A) = a + d(対角成分の和)
  • 行列式:固有値の積 = det(A) = ad - bc
  • 対称行列:実対称行列の固有値は必ず実数
  • 正方行列:n次正方行列は n個の固有値を持つ(重複を含む)

日本の数学教育における固有値

大学における線形代数

日本の大学では、理工系学部の1〜2年生で線形代数を必修科目として学習します。文部科学省の調査によると、国立大学の工学部では、ほぼ100%の大学で線形代数が必修とされています。

線形代数の標準的なカリキュラムでは、以下の順序で学習します:

  • ベクトル空間と線形写像
  • 行列の演算と行列式
  • 連立一次方程式
  • 固有値と固有ベクトル
  • 行列の対角化
  • 内積空間と正規直交基底

文部科学省 →

主要大学の線形代数教育

東京大学、京都大学、東京工業大学などの主要大学では、1年生の前期・後期で線形代数I・IIを開講しています。

特に東京大学では、教養学部前期課程で「線形代数学」が必修科目となっており、約3,000名の学生が毎年受講しています。教科書として、斎藤正彦『線形代数入門』(東京大学出版会)が広く使用されています。

数学検定での出題

公益財団法人日本数学検定協会が実施する「実用数学技能検定」では、準1級(高校3年〜大学程度)で固有値・固有ベクトルが出題範囲に含まれています。

準1級の合格率は約15〜20%で、線形代数の理解が合格の鍵となります。

大学入試での出題

大学入学共通テストでは固有値は出題されませんが、一部の国立大学(東京大学、京都大学など)の個別試験では、行列と固有値に関する問題が出題されることがあります。

2022年度の大学入試では、複数の国立大学で行列の対角化や固有値に関する問題が出題されました。

固有値の実用的な応用

量子力学

量子力学では、物理量を表す演算子の固有値が観測可能な値を表します。例えば、エネルギー演算子(ハミルトニアン)の固有値は、系が取りうるエネルギー準位を表します。

日本の量子力学研究は世界トップレベルで、2014年にノーベル物理学賞を受賞した赤崎勇、天野浩、中村修二の青色LED開発でも、半導体のバンド構造(固有値問題)の理解が重要でした。

振動解析・構造力学

建築物や機械の振動特性を解析する際、固有振動数(固有値)と固有モード(固有ベクトル)を計算します。

日本では、地震国であるため耐震設計が重要です。建築基準法では、一定規模以上の建物について固有周期(固有値から計算)の算定が義務付けられています。

例:東京スカイツリー(634m)の固有周期は約5秒で、これは構造設計時に固有値解析により求められました。

主成分分析(PCA)

データサイエンスにおける次元削減手法の一つである主成分分析(PCA: Principal Component Analysis)は、データの共分散行列の固有値・固有ベクトルを計算します。

日本企業でも、マーケティングデータの分析や製造業の品質管理にPCAが広く活用されています。例えば、トヨタ自動車では車両開発時の多変量解析にPCAを使用しています。

Googleのページランク

Googleの検索エンジンで使用されるページランクアルゴリズムは、Webページのリンク構造を表す巨大な行列の最大固有値に対応する固有ベクトルを計算しています。

このアルゴリズムの開発者であるラリー・ペイジとセルゲイ・ブリンは、固有値理論を応用してインターネット検索に革命をもたらしました。

画像処理・顔認識

顔認識技術では、固有顔(eigenface)という手法が使用されます。これは顔画像の共分散行列の固有ベクトルを計算することで、顔の特徴を抽出します。

日本では、NECやパナソニックが顔認識技術で世界をリードしており、空港の入国審査や防犯カメラでの人物特定に活用されています。

制御工学

ロボット工学や自動車の自動運転技術では、システムの安定性解析に固有値が使用されます。システム行列の固有値が負の実部を持つかどうかで、システムの安定性を判定できます。

日本のロボット産業は世界シェアの約50%を占めており、ファナック、安川電機、川崎重工業などが制御技術で固有値解析を活用しています。

固有値の数値計算手法

3×3以上の大きな行列の固有値を求めるには、数値解法が必要です。

主な数値計算手法

  • べき乗法(Power Method): 最大固有値を求める反復法。単純だが収束が遅い場合がある。
  • QR法(QR Algorithm): 行列をQR分解して反復する方法。最も広く使われる。
  • ヤコビ法(Jacobi Method): 対称行列の固有値を求める古典的な方法。
  • ハウスホルダー変換: 行列を三重対角化してから固有値を求める。
  • ランチョス法(Lanczos Algorithm): 大規模疎行列の固有値計算に適している。

日本の貢献

固有値計算アルゴリズムの研究では、日本の研究者も大きく貢献しています。特に、理化学研究所の計算科学研究センターでは、スーパーコンピュータ「富岳」を使用した大規模固有値問題の高速計算手法を開発しています。

また、東京大学の杉原正顯教授らは、精度保証付き固有値計算(計算結果の誤差範囲を数学的に保証する方法)の研究で国際的に評価されています。

よくある質問 (FAQ)

Q: 固有値は何に使うのですか?

A: 固有値は、物理学(量子力学、振動解析)、工学(構造設計、制御理論)、データサイエンス(主成分分析)、コンピュータサイエンス(Googleのページランク)など、幅広い分野で応用されています。システムの安定性解析や、データの特徴抽出に不可欠な概念です。

Q: 固有値が複素数になることはありますか?

A: はい、あります。実行列でも固有値が複素数になることがあります。ただし、実対称行列の固有値は必ず実数です。複素固有値は振動システムの減衰振動を表すなど、物理的な意味を持ちます。

Q: トレースと行列式の関係は?

A: トレース(対角成分の和)は固有値の和に等しく、行列式は固有値の積に等しいという重要な性質があります。これらは固有値を求める際の検算に使えます。例えば、2×2行列で固有値が2と3なら、トレースは5、行列式は6になるはずです。

Q: 固有ベクトルの正規化とは?

A: 固有ベクトルは定数倍しても固有ベクトルです。正規化とは、ベクトルの大きさ(ノルム)を1にすることです。v/||v|| のように、ベクトルをその大きさで割ります。正規化により、異なる固有ベクトル間の比較が容易になります。

Q: 行列の対角化とは?

A: 行列 A を A = PDP⁻¹ の形に変形することです。ここで D は対角行列(固有値が対角成分)、P は固有ベクトルを列に並べた行列です。対角化により、行列のべき乗計算や微分方程式の解法が簡単になります。

参考リンク