気液平衡計算 - 蒸留設計の基礎となる気液平衡を計算

気液平衡(VLE)の計算を行います。アントワン式による蒸気圧計算、ラウールの法則による平衡組成の計算、相対揮発度など、蒸留設計に必要な計算が可能です。

化学工学計算

気液平衡計算機

蒸留操作の設計に不可欠な気液平衡の計算を行います。温度、圧力、液相組成から気相組成を求め、 さらに相対揮発度や理想溶液からのずれを評価できます。

計算パラメータ

温度、圧力、液相モル分率、およびアントワン定数を入力してください。 一般的な物質についてはデータベースから選択することもできます。

相図

物質と圧力を選択すると図表が表示されます

グラフ上の点をクリックすると、その液相モル分率での計算が実行されます。 実験データはCSVファイル(x1,y1,temperature形式)から読み込むことができます。

気液平衡について

蒸留設計の基礎となる気液平衡の理論と計算方法

気液平衡の基礎理論

気液平衡(VLE)とは、液相と気相が熱力学的に平衡状態にある状態を指します。 この状態では、各成分の蒸発速度と凝縮速度が等しくなり、系全体として変化が見られなくなります。

主要な式と法則

  • アントワン式:ln(P_sat) = A - B/(T + C)
    温度Tにおける純物質の蒸気圧P_satを求める式
  • ラウールの法則:y_i * P = x_i * γ_i * P_sat_i
    実在溶液の気液平衡関係を表す基本式
  • 相対揮発度:α = (y₁/x₁)/(y₂/x₂)
    2成分の分離のしやすさを表す指標

入力パラメータの詳細

各入力項目の説明と注意点:

  • 温度 [K]:系の温度(ケルビン)。常圧蒸留の場合、通常は沸点付近の温度を入力
  • 圧力 [kPa]:系の全圧(キロパスカル)。常圧は101.325 kPa、減圧蒸留の場合はそれ以下の値
  • 液相モル分率 (x₁):液相中の成分1のモル分率(0~1の値)。x₂は自動的に(1-x₁)として計算
  • アントワン定数 (A, B, C):蒸気圧計算用の定数。多くの物質について実験的に決定された値が利用可能

計算結果の解釈

計算結果の各項目の意味と活用方法:

  • 蒸気圧 (P_sat):各成分の飽和蒸気圧。この値が高いほど、その成分は気相に移行しやすい
  • 気相モル分率 (y):気相中の各成分のモル分率。y > x の場合、その成分は気相に濃縮される
  • 活量係数 (γ):非理想性を表す係数。γ = 1 が理想溶液、γ ≠ 1 は実在溶液の挙動を示す
  • 平衡定数 (K):気液平衡定数 (y_i/x_i)。K > 1 の成分は気相に、K < 1 の成分は液相に濃縮

実用的なヒント

1. 理想溶液からのずれ:活量係数が1から大きくずれる場合、非理想性が強く、特別な注意が必要です。

2. 相対揮発度の活用:相対揮発度が大きいほど分離が容易です。一般的に1.2以上あれば蒸留による分離が可能とされます。

3. 温度・圧力の選択:減圧蒸留を行う場合、沸点を下げることで熱に弱い物質の分解を防ぐことができます。